平和条約は日本が領有する地域に竹島を含んでいない

2008年07月20日
 
■サンフランシスコ平和条約は日本が領有する地域に竹島(=独島)を含んでいない
 
 
前回のエントリーでは、サンフランシスコ平和条約で竹島(=独島)が日本領と認められたという日本政府の主張に反論し、その根拠として条約には韓国領案も日本領案も共に認められず削除された経緯があることを示しました。今回は日本領案が否定された経緯を中心に見ていき、日本政府が国民に隠している事実を明らかにしたいと思います。



まず、日本政府は、平和条約の第2条a項(日本が放棄すべき地域)に竹島の記述がないのは日本領土であるということが認められた証拠だと主張し、その裏付けとしてアメリカが韓国側の要求を退けたこと挙げています(下記参照)。



サンフランシスコ平和条約における竹島の扱い(外務省ホームページ)

 
これは「韓国領土でなければ日本領土である」と、国民に単純に解釈させるためのレトリックです。以下、外務省のホームページでは触れられてないことを書いていきます。



竹島(=独島)は、アメリカの第1~5次草案で韓国領とされましたが、日本政府の要請を受けたシーボルト駐日政治顧問の働きかけによってアメリカ第6次草案では次のように書き換えられました。



内藤正中・金柄烈『史的検証 竹島・独島』p105より
    •  アメリカ国務省第6次草案では、第3条で日本の領土範囲を「4主要島である本州、九州、四国及び北海道並びに瀬戸内海の島々、対馬、竹島、隠岐列島、佐渡、奥尻、礼文、利尻……歯舞群島及び色丹を含むすべての隣接小島からなる……」と、竹島は歯舞及び色丹とともに日本領と明記されるのである。



ところがアメリカ第7次草案以降では竹島の記述が脱落し*1、竹島(=独島)を韓国領に線引きしていたイギリス草案とも調整した結果、最終的には日本の領土範囲の記述自体がなくなっています(下記参照)。



サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)(東京大学東洋文化研究所田中明彦研究室『サンフランシスコ平和会議関連資料集』より)




したがって平和条約は竹島(=独島)を日韓どちらの領土とも規定したわけではなく、この問題は棚上げにされたのです。ということは日本政府が言うような平和条約の第2条a項(日本が放棄すべき地域)に竹島の記述がないことだけを理由に、日本領土であるという解釈は成り立たないのです。



日本政府は、自らの主張に正当性があると確信しているのであれば、なぜこのようなデタラメをホームページに載せるのでしょうか。



私には日本政府が本気で竹島(=独島)を奪還しようと考えているとはどうしても思えないのです。そこには別の意図が透けて見えます。今、年金問題、道路行政など国民の不満は政府に向かっています。それが内閣支持率にも如実に現れています。この国民の怒りをどこへ振り向けるか。一番好都合なのが、隣国の脅威を煽ることに外なりません。そして信頼が地に落ちた国家への求心力を取り戻すにも、ナショナリズムを刺激することが有効であるとすれば、まさに一石二鳥。これが日本政府の本心ではないでしょうか。

  • 最終更新:2009-02-08 07:14:07

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード